nach meiner Meinung

「わたしの意見では」。主にジェンダー領域に関わるような話を、学問レベルには足りないくらいのところで書いていきます。

呪われた心霊動画XXX10がつらかった話

このブログのテーマとはずれてしまうので増田に書こうかとも思ったんだけど、別に匿名にしたいわけでもないしわたしが書いたって一発でわかると思うのでこっちに書きます。※ちなみにネタバレありなので気を付けてください。

言いたいのはタイトルの通り。
1からずっと追っている傑作心霊DVDシリーズ「呪われた心霊動画XXX(トリプルエックス)」。
ずっとツイッターで騒いでいるので知っていただいているとは思う。
このシリーズがいかに面白いかという話については、現在評論同人誌を鋭意作成中なのでそちらで十二分に語るつもりだが、その最新作である「呪われた心霊動画XXX10」が本日発売&レンタル開始である。 

呪われた心霊動画 XXX(トリプルエックス)10 [DVD]

 当然前日=店着日である昨日、フラゲならぬフラレンタルして見たわけだが……。

 

これはXXXなのだろうか………。

 

正直、見る前から不安はあった。だって今までとジャケットが違いすぎる。

呪われた心霊動画 XXX(トリプルエックス) [DVD]

↑これが一作目。
ただ、これは意図的なものだと思っていた。
こう、あえて、チープっぽい雰囲気にしつつ、そのチープさをうまく恐怖つなげてくるんだな、憎いねこの、と。
でも違ったようだ。
おそらくだが、監督が変わっている。スタンス、タッチ、なにもかもが違う。
昨夜の混乱、怒り、そして悲しみの様子をご覧いただきたい。

つらい。

この辛さをすこしでも吐き出したいという目的のためだけにこの記事を書いてます。
だから同じこと何回も言うと思うし、まとまりないけど、書かせてくれ。
今回どこがまずかったかは盟友ツノダ骸人形くんがまとめてくれているので、それを引用しながら後ろにだらだら文句と悲しみの慟哭を記していくスタイルで行きます。

 

1 テロップがなんか全体的にダメ

もうその通りで、テロップでなんか色気出してくるっていうか、ふざけてるんですよ。
XXXって「無駄な調査一切なし!」を謳ってるシリーズなんですね。それって要は他の心霊DVDにケンカ売ってんすよ。
「無駄な調査」って何かというと、怖いことなにも怒らないけどスタッフが走り回ったりするアレ。つまり「無駄な調査」のシーンって、スタッフのシーンなんですよ。
普通はここを面白くするためにスタッフのキャラを立てていろいろやったりするわけだけど、そこを切ると言い切った。それって、スタッフのキャラクター性も一緒に切るって決意なわけです。
言葉通り、これまではほとんどスタッフの存在感はなく、わたしたちの目の前に直にその「現象」が置かれているスタイルで、これが怖かった。

……なのに、めっちゃ出てくるやん、スタッフ、テロップという形で。
もーーーーー、ほんとにうざい! まず一発目の字幕がロケバスへ乗り込む投稿者への「腕、どうしたんですか…?」という問いかけ。知らんがな! 要らんがな!
過去作への言及についても「われわれスタッフは~~」みたいな感想が出る。うざーーーーー。お前らの感想なんて求めてないよ!!!
あとこの「…。」っていうのがすっごい多かったの。ほん呪か! これまではほとんどが事実を淡々と伝えるテロップで、スタッフの主観的な意見はあまりなかったのに(○○に見える、とかはちょっと無理があるかな?って時もまれにあったが)。
「~~~のだが…。」ってほん呪のナレーションの文法なんですよ。わたしこれ嫌いなの。だからなんなんだよ! ってなる。それが何回も出てきて悲しかった。

あとはテロップ入れすぎ問題。映像が切れると集中力も切れるんです。AVの冒頭のどうでもいいインタビューみたいなスパンでテロップ入れんな。
集中力が途切れるからどれもダラダラと長く感じるんですよね。
演出、緩急のつけかたという観点がずっぽり抜け落ちてる感じ。

ツノダくんの言う通り、テロップで説明するなど愚の骨頂なのですよ。
怪異とわたしたちの間に何かを介在させるな。あと、舐めるなよ。

 

2 霊能者がでてくるのがダメ

まあこれも今さっき書いた、「怪異とわたしたちの間に何かを介在させるな」って話ですよね。
XXXには「信頼する霊能者」という語られるだけの存在がいたんですよね。名前も顔も知らないし除霊もしないけど、どのくらい危険かだけ判断してくれる人。
そもそも霊能者って、マンガっぽいじゃないですか。存在が。
だから出てくるとリアリティがぐっと下がるんですよ。で、リアリティが下がるとどうなるかっていうと、怖くなくなる。世界線が違うからね。自分と無関係な話になる。
だから極力霊能者を排除したつくりはとても良かったわけです(ただしその怪異の強力さを示すのに客観的な意見を出すためには「有識者」が必要で、そのための「信頼する霊能者」だった)。

だのに。でてきちゃったよ、霊能者。しかも胡散臭い女子大生。マンガじゃん。
これが、「胡散臭い除霊セミナーみたいなのに言ったら霊能者とは無関係に霊現象にあった」みたいな話の、前段としてならいいですよ。
違うもん。普通に怪異に対する対抗策として出てきちゃった。しかも除霊成功しちゃった。じゃあ話終わりじゃん。もう怖くないじゃん。
極論すると、心霊DVDに解決は望んでないですよ。ドラマじゃないんだから。ドラマとして展開するホラー映画(フェイクドキュメンタリーでも)では解決があってもいいけど、心霊DVDには不要。なぜならわたしが欲しているのは恐怖の表現だから。
ドラマ性を一切排除しているからこその質感、恐怖が魅力だったのに。

今回の怪異はそれ自体がわりとしょぼいのでまあいいんだけど、この胡散臭い霊能者によって、過去作「付着物」の怪異までもが解決に「追い込まれた」のが本当につらい。
投稿者と音信不通で不気味に終わったのに……あの余韻をぶち壊し……。

 

3 意味がわかる怪異がダメ

もーーーーこれ!!!!! ほんとにこれ!!!!!!

怪異の!!!! 気持ちを!!!!!! 代弁!!!!! すんな!!!!!!

ふっざけやがって…。そんなの怖いわけないじゃん、普通に考えてもわかるでしょ…。
次と絡むんですが、わたしたち(あえてこの主語で行くが)は、怪異の裏側を探ることに心血を注いでるんですよ。
各話のつながりを探ったり、例えば「十二様」ってなんなんだろう? ということを調べてあたりをつけたり、そういう遊びができる適度が空白がたくさんあったんですよ。
その空白は恐怖であり、探求心をくすぐるものだったんですよ。
ああ………。

 

4 伏線がないのがダメ

まあ上でほぼ言っちゃいましたけど、そういうことです。
そして繰り返しになるけど、伏線がないわりに勝手に「付着物」にしょぼいオチをつけたことは本当に許せない…。
最近は1巻まるごとひとつのテーマでやるパターンが多かったけど、それでもないし。
本当に、ほん呪とか、ほかのシリーズみたい。つらい……。

 

5 霊障映像がないのがほんとにダメ!!!!

つらさが増してきてあんまり話せなくなってきたけど、これだけは言わねば…。

霊障映像のないXXXはXXXじゃねえ!!!!!!

霊障映像というのは、来歴不明の、強い霊障を引き起こす意味不明な映像のことで、「ヒンナ神」や「バラバラ」「歪む部屋」とかがそう。
これも執筆中の本に詳しく書くが、XXXの前身である『死画像』の冒頭にこんなテロップが出る。
「本シリーズの巻末には、見ると死をもたらす可能性がある映像、いわゆる『死画像』が収められている」
これがあの「クニコ」の映像のこと。つまり、死画像から始まるこのシリーズは、毎巻1本、この「死画像」=「霊障映像」が入っていなくてはならないんですよ。
なのに!!!!!!!!
霊障映像がなかった。
霊障映像がないものはもうXXXって呼ばなくていいと思うんです、わたし。
霊障音声? みたいなものは入ってたけど、これさ、霊障起きてないじゃん。ていうか話忘れたわ、つまんなくて。
霊障映像は、それを見ること自体がリスクである、という作りが怖いんですよ。
ただ「霊障があります」と文字が合っても無根拠で、霊障映像が出てくるエピソードっていうのは、その映像による霊障の存在を証明し、補強するものなんですよ。
ヒンナ神だったら友人や母親が不幸な目に遭ったり。
そういうのないじゃん。そんなのだめだよ。
友人が自殺したとは言ってたけど、自殺とカセットの因果関係もわかんないし、そもそも「連絡があったのは実は死んだ後の時間だった!」みたいな話今時ベタすぎて、手垢つきすぎて、よっぽどの策がない限りやるなよって感じ。
そんでその音声も全然怖くないし。
見るだけで不快になって、怖くなって、背筋が寒くなって、そういう映像表現に真剣に取り組んでいるからXXXは他と違う心霊シリーズになれていたのに。
なんでそれを捨ててしまうのか………。
あ、いま、本当にかなしい…泣きたい…。

 

6 パクリだからダメ

ほんと、パクるよりパクられる意気でいてほしかった…。
ちゃんとユニバース広げてきたんですよ、XXXは…。独自の世界観や造形がしっかりあった。質感やトーンがしっかりあった。
なのになんでここにきて、なんのひねりもないパクリをやらかすんだ!!!!
特に一本目は、本当に放送禁止の「恐怖の隣人トラブル」そのものだった。

女が体の前で手を×印に動かす、被害者だと思った人間が×印を使う、「見えているものだけが真実とは限らない」という放送禁止お約束の文言までパクりやがった。
せめて印を変えるか、オチを変えるかしろよ。放送禁止は謎解き要素が面白いけどそれもないんだぞ。本当に悪質なパクリ。
そしてコワすぎのひとつのエピソードを二つのエピソードで使うという所業。

信じられないもう……。
これはオマージュとかではなく、本当に、ただのパクリです。
何にも昇華してないし、うまく生かせてもいないし、面白くない。

 

つらい

はあ………書いても落ち込む一方だったけど、とりあえず吐き出せたので良かった。
あと映像もチープで良くなかったですよ…窓の女とかさ。安っぽーいの。
浮遊少女も、コワすぎはドラマでSFなのであの表現でいいだけであって、ドラマがなく、怖いことが目的であの表現をするのは本当に、ダメだと思います。
XXX1から毎巻1本監督してた向悠一さんという方が外れていたので、体制が変わるのか何なのか…でも彼が監督した作品どれもめっちゃいいので、戻ってきて欲しいです。

失ってわかる大切さというか、今回の件で、これまで10本のXXXシリーズ(死画像含む)がこんなに面白かったのって、やっぱり奇跡なんだな…って思いました。
一応大枠は同じフォーマットで作っても(まあテロップの多さとかはフォーマット崩してきてると思うけど…)、こうまで違う。
なんて繊細な、儚いものだったんだろう…それで10本も作れたのは本当にすごい…。

とはいえ。
このシリーズをここで見切るわけにはいかないのです。
邦ホラー界の希望の星、XXXには、これしきのことで倒れてもらっては困るのです。
持ち直しましょう。立て直しましょう。
もちろん、わたしの想像や希望なんて超えていってほしいし、消費者の思い通りにする必要はないと思いますよ。
でも、今回のは、面白くなかったですよ。
これだったら他の心霊DVDと変わらないですよ。XXXを見る理由がないですよ。
ここまで積み上げてきたものがあるんです。そこに惹かれているファンもきっとたくさんいるんです。
もしそれを捨てるなら、それより面白くならないと。

何が悲しいって、前作まではひしひしと感じていた、恐怖への愛情を、全く感じないことです。
心霊DVDなんてどれも一緒って舐めてるんじゃないの? って思っちゃいますよ。じゃなきゃ、安易なパクリなんてしないんじゃないのかな。
こんなに面白いと思わせてくれて、怖がらせてくれたXXXには、本当に感謝しているんですよ。
愛ゆえにつらいんだ………。

どうか、どうか、11ではこれまでのXXXに戻ってきてくれることを、これまで以上のXXXになってくれることを、心から願ってます。

 

頼む!!!!!!!!!!!