nach meiner Meinung

「わたしの意見では」。主にジェンダー領域に関わるような話を、学問レベルには足りないくらいのところで書いていきます。

なぜ女性向け風俗はない(少ない/メジャーでない)のか?

前段

先日(と言いながら数カ月経ってしまったが)、仕事中にツイッターをしていたら、面白いツイートが。

角田氏は学生時代の友人なのですが、こういう面白いことをぽっと言ったりする。
ここぞとばかりにリプを飛ばし、仕事中に小一時間ほど談義しました。
今回はそのまとめらしきものと、わたしの考えを少し。
女性向け風俗、あってもいいよね、でもその前に立ちはだかる大きな障害など。

なんでないんだろ?角田氏とナツメの見解の違い

引用だと見づらいので、本人の許可を得て、会話形式でその時のやりとりを公開。
こんな話を会社のデスクでしてました。

角田氏 女の人向けの風俗ってないの?
    なんで?
    という疑問は毎回思う。

ナツメ ないのかね?
    ないとしたらまあ、男性客・女性従業員より
    女性客・男性従業員の方が、

    客が犯罪の被害に遭いやすいからかな?
    男性向け風俗(女性従業員)は、
    一般的に言って力とかが弱い女性の側に
    会社(バックアップ)がつくからいいけど…っていう。

角田氏 あんま見たことないけどねー。
    頼みづらい点で無いのかと思っていたけど。
    あと、男の方が「特定の人とセックスしたい!」
    みたいな思いが薄いから
成立してんのかな。
    関係ないか。

    謎だし、不公平。

ナツメ わっからん。

    わたしがもし利用するとしたら、
    さっき言ったような怖さがネックかなと思った。
    でもおさわり系のホストクラブ?
    みたいなのはあるらしい…?

    所謂本当の一対一の風俗だとリスク感じるけど、
    オープンな空間での
    エロティックサービスならいいかも。

角田氏 そういう危機意識は男向けの風俗では
    感じたことなかったけど、あるもんなんだね。
    なるほどな。

    でも、女だって性欲あるわけだし、
    なんか中途半端なもんしか無いのはなんだかな。

    広まらない理由含め、
    イマイチ釈然としない思いがあるのよね。


ナツメ 釈然としないのが面白いな笑
    わたしは当事者的に、
    そこの危機意識は何にも勝ると思う
し、
    てかそこクリアしないと、
    そもそも気持ちよくならないと思う。
    そのリスクあるならオナニーでいいよって。

    だって、男側は嬢相手に発射して終わりだけど、
    こっちは妊娠すんだよ

角田氏 そうか、そのリスクか。そりゃ当然だ。
    なんでこんな当たり前のこと忘れていたんだ。
    反省。

    でも、子供産む大変さを負っている種族が、
    アホみたいな男より性サービスに
    恵まれていないのが、不公平に思える。
    女の人がいいならいいんだけど。

ナツメ 妊娠と性病怖い。
    あと別の線で行くと、女の人は
    しようと思えばタダでできるんだよね

    買ってくれる男の人がいるでしょう。
    だから女が金払って
    性サービスを買うっていうのが

    男女の文化的役割と
    噛み合わない
んじゃないかな。

    でもわたしまだ処女だったら金払ってたかもw

角田氏 うーん、買ってもらうのはこう、
    私が願う性サービスの理想とちがう。
    ちゃんとした風俗行くと、
    嬢の人本当丁寧で、おもしろいからさー。

    衣食住の一つとしてのエンタメを、
    こう、何いってんだおれは。

ナツメ 同じことでお金貰ってる女がいるのに、
    自分は払うってなんか惨めじゃん。
    女としての価値がないって感じで。
    っていう感覚はある。

    女が性をエンタメとして消費するには、
    リスクを極限まで下げないと
    いけないから難しいよね。

    だからAVかレズ風俗が限界と思うぞ。

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ナツメ ちなみにこんな感じらしい。
   (https://pan-pan.co/detail/35271
    でもググったら案の定
    「挿入NGなのに挿入されそうになった」
    とかあるから、
    やっぱり「客が被害に遭うから」は
    でかい気がするなぁ。
    嬢が無理矢理挿入しても
    被害にならないのか?
問題か?

角田氏 まだまだ店側のプロ意識が低いのか。
    未成熟な業界なんだろうね。

    嬢が無理やり挿入は、
    まず男が拒まない感ある。

    アホだな。
 

まとめると…

それぞれが思う女性向け風俗が少ない/メジャーでない理由は

(ナツメ)
・リスク(妊娠/性病)をクリアできないから?
・利用者が従業員側から暴力などを受ける可能性が高くなるから?
・女性はお金を払わなくても性行為にありつけるから?

(角田氏)
・頼みづらいから?
・女性のほうが「特定の相手との行為」にこだわるから?

「セックスとリスク」の認識の違い

まず前提として、角田氏の意見が「男の総意」だとも、わたしの意見が「女の総意」だとも思っていません。
そう扱うつもりもありません。
個人的な感想を言えば、角田氏はかなり女性に寄り添って考えている印象です。
でも、それでもわたしが「女性として」考えた意見と、こんなに違いがあるんだ! と驚いたのは、
「セックスにはリスクが伴う」という認識の度合いの違いです。

わたしが、未知の相手と実際にセックスをすることについて考える時、
まず頭をよぎるのは妊娠のリスク、ついでHIV性感染症のリスクです。
そこの問題がクリアになってはじめて、イチモツは大きい方がいいかとか、どういうプレイがいいかとかいう具体的な話が出てくる。
そこをクリアしないセックスの実施については、すべて却下です。
だって、そのリスクに思いを馳せた時って、めっちゃ怖いんですよ。
泣きたくなるくらい。
中絶することになって膣から細いはさみを入れられて中で胎児を刻むところとか考えるんですよ
HIVにかかって、その後本当に好きな人が出来てもセックスできず、毎日同じ時間に薬を飲んで、でも衰弱していくところを想像するんですよ。

まぢむり。。。

JK(JKなのか?)になるほど無理です。書いてて具合悪くなってきました。

いやね、昔は思ってましたよ。このままずっと処女だったら、お金払ってセックスしてもらうしかないんだ…って。
でもお金払ってセックスしてもらって、挙句性病にかかったり、中絶する羽目になったらもう、惨めの上塗りじゃないですか。しかも誰にも同情してもらえなそう。
だれも悲しんでくれない滑稽な悲劇の出来上がりです。
と、お得意のネガティブ妄想をとことん広げましたが、まあ、程度の差こそあれ、こういう感覚を持っている女性は少なくないんじゃないかと。
このリスクの部分をクリアして、完全に安心できますよ、という売り方が現状難しいから、女性向け風俗はない(あまり聞かない)んじゃないかなと。

でも角田氏は、わたしが「妊娠」と言うまでそのリスクを特に考えていなかったわけで。それが悪いとかではなく、わたしからしたら新鮮でした。
その後氏の発言で「エンタメとして」というものが出てきて、これもかなり面白かったのですが、たしかに、男性向け性サービスのバリエーションを見るに、まぎれもなくそれは「娯楽」なんでしょう。
そこにある「セックス」は、わたしが思うような現実の生活と地続きで切実なものでなく、一種の非日常だったり、選び取って、楽しめるものなんだろうなあ。
それ自体は、結構、羨ましいと思います。わたしもそんな風に性を遊びたい。

あと、不思議なのは、妊娠のリスクについては、もちろん女性のほうが高いし、自分ごとなのはわかるとして、性病については男女ともにリスクは等しいと思うんです。
正直、男性向けの風俗の具体的なサービスを知らないのでわかりませんが、感染の機会は完全に排除されてるんですかね?
まあ基本的にコンドームは装着するんでしょうけど…ゴムなしは男が強要することはあっても女はしないから大丈夫ってこと? そうだとしたらあまりにひどくない? など…。

セックスとプライド

この点はかなりわたしの独自性が強い気もするのですが、女性が性サービスを買うのって、男性がそれをするよりも、プライドの問題に関わってくる気がします。

女が金払って性サービスを買うっていうのが
男女の文化的役割と噛み合わないんじゃないかな 

同じことでお金貰ってる女がいるのに、自分は払うってなんか惨めじゃん。
女としての価値がないって感じで。っていう感覚はある。 

このあたりですね。

鶏と卵的になってしまいますが、やはり、性サービスは「男性が買う、女性が売る」ものだという固定観念があって、金銭が発生する限りそれは「価値」だとわたしは考えています。
女性の性には金銭的価値がある。
そしてこれは非常に問題がある認識であり、性産業従事者への偏見を助長する考えでもあると思うのですが、女性の「価値」のうち、「性」の価値は高値でありつつも誰でも=容姿や学歴などほかの「価値」が低い女性でも「売れる」もの、という認識が根強くある気がします
わたしが言った「女の人はしようと思えばタダでできる」というのもここから来ています。
最終的な目的は同じ「性行為」なのに、普通であればそれでお金をもらえるのに、もらうどころか自分が支払うって、すごく惨めじゃん。と、わたしは昔から考えることがありました。
どんな女でも性は売れるのに、わたしの性は売れないどころか、金をもらわないとやりたくもないんだ、って思いたくない。

この考え方は論理的に間違っていて、「売る自分の性」と「買う相手の性」はイコールではないんですね、本当は。
売るときは相手を選べないし、自分の望むプレイもできない。買うときは自分好みにカスタマイズすることができて、そのカスタマイズ性も含めてお金を払うんです。
「性を買う女」は「性を買ってもらえない女」とは限らない。
それは理性的に考えればわかるんですが、感覚的には、やっぱりプライドが許さない。

性に積極的なことも、「一般的な女性」としてはマイナス評価になりかねないということも理由にあるかもしれません。
彼氏とのセックスに対してちょっと積極的なくらいは可愛いかもしれないけど、性サービスを金で買うほど「飢えた」女は嫌だ、という「想像される男性の視線」が怖い、という感覚ですね。
これはいわゆる男性的な処女信仰(実在しているかは不明)を女性が内面化した場合です。


いずれにせよ、「性サービスを買う“ような”女」と思われることによる不利益を恐れている、というのは少なからずあるかと思います
(角田氏が言った「頼みづらい」というのも、このことかなと思います)

 

愛とセックスとわいせつ

ここまではわたしの言った意見について掘り下げましたが(暴力などのリスクは言わずもがななので省きますが)、角田氏の意見が的外れかというと、全然そんなことはないと思います。

男の方が「特定の人とセックスしたい!」みたいな思いが薄いから成立してんのかな。 

これ。
これ、面白いですね。どうなんでしょう。
わたしの場合は、特定のパートナーがいる時は、パートナー以外とはセックスしたくないです。
そして、プラトニックなパートナー以外とのセックスの経験がないので、「そうではない」セックスがどういうものなのか、いまひとつ想像がつかない。
つまり、わたしの中では「愛」と「セックス」は、今のところ不可分である、ということです。
愛なきセックスというものが自分の中に存在しない。

あとですね、これを書きかけの間に、こんな記事を読んだんです。

www.nikkeibp.co.jp

これ、めっちゃ面白かったのでぜひ全部読んでほしいんですけど(全4回)、この中にも今言ったことに関連しそうな言及がありました。

(筆者注:TENGA社長松本氏が、勤めていた会社を辞め、ものづくりの仕事をするために様々なプロダクトを見て回ってる中で、アダルトグッズ売り場で違和感を覚えたという話)

 

松本:(略)違和感の最大の原因は、棚に並んでいる商品が発している暗黙のメッセージであることに気が付きました。そのメッセージというのは、「マスターベーションは卑猥な行為なので、よりわいせつな気持ちで使ってください」というものです。

 

森辺:マスターベーションが卑猥な行為であるとされていて、だからそのときに使用するアダルトグッズも「卑猥なもの」であるのがふさわしい、というメッセージですね。

 

松本:はい。僕の周りの男性は、10人いたら10人が普通にマスターベーションをしています。にもかかわらず、その店の棚ではその行為を「特殊で、卑猥なことだ」と言っているわけです。
人の根本的な欲求なのに、特殊で卑猥なものとして表現されている。これは明らかに間違っている、と思ったんです。

この「卑猥さ」「わいせつさ」って、パートナーとのセックスにはないものじゃないですか?
個人的にセックス=性行為そのものを「卑猥」だとか「わいせつ」と思ったことはないです。
松本社長の言うように、オナニーも、そしてセックスも、「人の根本的な欲求」、なんならヘルシーなものだと思います。
「卑猥さ」や「わいせつさ」って、「愛」が欠如した場合に性的興奮を掻き立てるための「代替品」でしかないんじゃないかな、と思ったりしました。
この話はこれはこれで面白いので、また別の機会に深堀りできたらいいなと思います。

話を戻すと、「愛」が原動力となるヘルシーなセックスと、「卑猥さ」によって代替された性的興奮に基づくセックスは、そもそも毛色がかなり異なるのではないか、というのがわたしの意見です。
代替品だから悪いなんて事はなく、別物なんだから別に楽しめばいい、とも思いますし、前述したハードルがなくなれば、女性にとっても身近になるような気がします。
ポテチとかマックみたいな感じで、ヘルシーではないけどたまに食べたくなるもの、というようなイメージ。

こういう感じであってるかな、角田君?笑

 

エンタメとしての性/風俗

ここまでは若干ネガ寄りというか、問題点を色々と列挙してきました。
タイトルの「なぜ女性向け風俗はない(少ない/メジャーでない)のか?」については、上記の内容が現状の答え(の一部)になるのかなと思います。

じゃあ、最後に未来の話を。

(女性の目線で、男性に「買ってもらう」のは)
私が願う性サービスの理想とちがう。
ちゃんとした風俗行くと、嬢の人本当丁寧で、おもしろいからさー。
衣食住の一つとしてのエンタメを、こう、


角田氏の言う「エンタメとしての性風俗サービス」、これを女性が享受するにはどうすればいいのか?

そもそも、そういったものを女性が望んでいるの? というと、わたしに関しては「YES」です。
まあ、前述したように、特定のパートナーがいるときは個人的には必要ないと思うのですが、そうでない時に利用できるサービスがあると、うれしい。
たまには食べ放題に行って腹いっぱい食べたいように、
たまには時間を気にせず、昼過ぎまで寝ていたいように、
たまには疲れて飽きるまで性的快感を得たいと思うのはかなり普遍的な欲求だと思うのです。

その際に問題となるのは、何度も言うようにリスクの回避です。
妊娠、性感染症、さらにクローズドな空間での暴力の危険性。
そういったものが無い、ということが大前提になります。
いち女性(女性身体をもつもの)としての個人的な感覚ですが、そこがクリアにならない限り、わたしは絶対に利用しないな、とも思います。
男性が性風俗サービスを受ける際に想定するデメリットと、女性のそれは、相当な差があるんじゃないでしょうかね。

でも、実は最後の問題がクリアされれば、前の二つは自動的に解決される気がするんです。
曰く、コンドームの着用を徹底すればよい。
というか、そういったサービスで、コンドームを着用しないこと自体、暴力なわけです。
だけど、そこの徹底ってかなり不可能に近いんですよね。
だってそれができたらもうしてるでしょ
聞く耳を持たない暴力男が数パーセントいて、そいつに当たる可能性が0じゃないから、女性にとってのリスクはいつまでたっても減らない。
さてじゃあどうするか。。。。

実は、以前これの答えになるようなものを見たことがあるのです。
それは男性向け同人誌でした。
同人誌なので名前は伏せますが(気になる人はTwitterで聞いてください)、かなりぶっ飛んだ内容でした。
セックスのテーマパークがもしあったら…というようなもので、そこを訪れたいろんな女性が奔放に性をむさぼっており、その姿が抜ける!という趣旨のものでは合ったのですが、その架空のテーマパークのシステムが、意外と合理的なんじゃないか?と思ったのです。

男性は入場時にコンドームの着用が義務付けられており(かわいいキャストのお姉さんがつけてくれる)、男女ともに、「どこまでOKなのか」を示すステッカーを身につけている。
それを見て来場者同士で相手を探して、好きに行為に及ぶ、というわけです。
(ちなみにキャストとするには別料金がかかる設定でした笑)
さまざまなプレイができるアトラクションやエリアがあって、たとえば動物になりきってプレイするエリア、とか、個々人の性癖に合わせて楽しめるわけですね。

まじめに書くとすごい間抜けなんですが、これ、かなり理想的な、いわばユートピアじゃないかと思うんですよね。
まあ、入場時につけるコンドームとかは、リアルに考えるとつけっぱなしで外れないの? とか複数回に耐えるの? とか科学の進歩が待たれる部分もあるんですが笑、
システム化された、他者の監視下で、互いの意向を尊重して、対等な立場(行為する二者ないし複数者間で金銭の生じる関係はない)で、というのが、暴力の防止にすごく役立つと思うのです
密室で、二者間で、金銭がからんでいると、暴力は起きやすくなると思います。
それをオープンな空間にうつす。そうすると他者の目がある。それだけで抑止力になります。来場者同士でなく、テーマパークですから、パークの従業員もいるので、万が一そこで不穏な動きをする人がいれば、なんらかの対処をしてくれるでしょう。

多分これに近いのはいわゆるハプバーなのかな?と思うのですが(行ったことないので違うかもしれない)、暗いし、バーだと目が行きとどかないでしょうから、抑止力はまだ小さいのかな、と思います。

件の同人誌は、テーマパークなので、どうも屋外(の完全に囲われた空間)として描かれているんですよね。というか、デ○ズニーランド的なイメージですね。
オープンで見通せる空間、適当な間隔で配置された従業員(そして彼らはパークの雰囲気を壊さないような衣装・ふるまいである)、意思を表示するステッカー、好みで選べるアトラクション…安心安全に性を遊べるまさに夢の国!

あとは科学の進歩が魔法のコンドームを生み出し、その状況下で興奮できるように我々が進化できれば、実現待ったなしですね!
楽しみにしてるので誰か作ってください!